目覚める前
海に沈みながら、境界のことを考えていた。 最初に境界を意識したのは、「痛み」だった。 痛いとかも知らなかったから、今思えばである。 つまり、赤ちゃんだった頃、寝返りをうった時に、ベビーベッドの片隅に頭をぶつけた時だ。 そのときに自分と、そうで…
数十億年前、この無境界の世界にただ一つ、膜ができた。 それが、始まり。 海に沈む中、静寂と、ただ一つの膜のことを考えた。 膜が境界を生んだ。 物質的には無境界ではなくなった。 自分の境界は、何処からなんだ。
もう上も下も、右も左もない。 沈んでいるはずだが、それすらよくわからない。 上昇しているのかもしれないし、右に進んでいるのかもしれない。 あるいは左に引き戻されているのかもしれない。 もう、そんなことどうでもいい。 ただ、ただ力を抜き、あるがま…
今日も海の外は晴れだろうか。。。 上を見上げると、まだほんのり明るい。 でも、もう少ししたら、上も下も、右も左もなくなりそうだ。 まだ沈んでいる感覚はあるが、それもやがてなくなるだろう。 そうしたら、沈んでいるのか、浮遊しているのか、上昇して…
深く深く潜っていた。 と言うより、落ちていた。 泳ぐことを止めた。 手足をバタつかせることも止めた。 そしたら、ただただ海の底に向かって落ちた。 沈んでいく中、上を見上げると、波に乱反射しながら空が見えた。 太陽は白く輝いている。 さらに沈んだ。…